韓氏意拳と摔角(シュアイジャオ、しゅつかく)の関係について

この度は韓氏意拳の教学体系とは別に韓競辰導師に摔角(シュアイジャオ、しゅつかく)の特別講座を日本韓氏意拳学会会員向けに開いていただくことになりました。

今回の特別講座を開催するに至った経緯と、摔角(シュアイジャオ、しゅつかく)が何か御存知でない方に簡単な解説をいたします。

シュアイジャオとは?

シュアイジャオは中国でも最も長い歴史を持つ組技の武術であり、時代によって角抵・角抵戯・角觝・角力・相撲・摔角と表現が変わって行きました。宋代の組技には、争交(ジィンジャオ、そうこう)と呼ばれるものもあり、それも現代に伝わるシュアイジャオの源流にあたりますが、現代のシュアイジャオとは恐らくその体系の大部分が異なることが推測されます。文献としては960年/宋代に調露子が著した『角力記』がシュアイジャオに関する体系的に記された最も古い最初の書物です。その後中国の王朝交代にともない、モンゴル族や満州族の組技武術を吸収し、影響を受けてきて清朝末から現在の摔角へとなって行きました。また、このシュアイジャオは主に中国の北方地域で盛んに行われている組技系武術であり中国南方の武術には余り見受けられない体系でもあります。あと、混乱を避けるためにも現代の中国における摔角(シュアイジャオ)は伝統摔角(チュアントン シュアイジャオ)だけを指す訳ではなく、アマレス、プロレスなど組技系の武術/格闘技全般を指して摔角(シュアイジャオ)と呼んでいることも理解しておく必要があります。摔角(シュアイジャオ)の意味と定義が現代中国では広範囲に広がり、摔角(シュアイジャオ)=組技武術/組技格闘技くらいに理解しておいても良いかと思われます。

韓氏意拳と伝統摔角(シュアイジャオ)の関係とは?

韓氏意拳と伝統摔角(シュアイジャオ)の関係は深く、中国北方地域出身の韓家は韓星橋老師の叔父にあたる方が此の摔角(シュアイジャオ)の使い手だったらしく、韓星橋老師が最初に手ほどきを受けたのが其の叔父さんからでした。無論そこから更に摔角(シュアイジャオ)の研究を深めるために若き十代の韓星橋老師は北京の摔角(シュアイジャオ)訓練場のトップ3にあたる所をまわり数年でNo.1の訓練場で他の摔角の使い手たちに後れを取らなくなるほどの頭角を表しました。

そうしたことから、いま現在わたしたちが行なっております韓氏意拳の形体訓練や站樁が形成されて行く過程においても、この摔角(シュアイジャオ)の訓練方法は大きく関わっています。また、過去において意拳が体系として形成されて来た時代の王向斎門下の実力者、趙道新(ちょうどうしん)、卜恩富(ぼくおんふ)、韓星橋(かんせいきょう)、韓星垣(かんせいえん)、は皆が摔角(シュアイジャオ)の実力者でもありました。単純な見解ではありますが、その歴史から見ても「意拳を学習する上で基礎として摔角(シュアイジャオ)を学習することは意拳の拳学への理解が進むこと」になっているようです。ここで少し私見を述べさせていただくと、これは摔角(シュアイジャオ)に限らず、武術を学ぶ以上は打撃の専門家になるにしても組技と打撃技の双方を体験し、研究しておく必要があります。“もし、組まれなかったら勝てていたのに”“組まれなければ勝てる”は裏を返せば“組まれたら負けてしまいます”と言っていることは同じことになります。ちなみに韓氏意拳を創始した韓競辰老師も若い頃に摔角(シュアイジャオ)を父親である韓星橋老師から習い、その後も地元ウイグルの訓練場で相当訓練されたそうです。韓競辰老師の意拳の実力も摔角(シュアイジャオ)の基礎に裏打ちされていることも伺えます。

なぜ拳学、拳法である韓氏意拳を行う上で組技である摔角(シュアイジャオ)の経験と理解が必要か?

拳法家、武術家で組技の経験があり、組んでも後れを取らないだけの自信がある人間が“組まなくても勝てる”と言うのと、組技の経験が皆無に等しい人間が「組まれたらどうしよう」と不安を積もらせながらも“組ませなければ勝てる”“組まれなければ勝てる”と言っている場合には言葉の上では似たようなことを言っていても実際の所は全く似て非なる心境で語っていることになります。韓氏意拳の創始者である韓競辰導師が“組まなくても勝てる”と語る理由を今回の摔角(シュアイジャオ)基礎クラスと初級、養生、中級の講習会を照らし合わせながら受講することで理解できるようになるかと思います。

私自身の組技の経験からもその必要性、重要性を知るところがあり。今回は韓競辰導師による摔角(シュアイジャオ)講習会を特別に開催していただくことになりました。

更には初級、養生、中級のクラスと合わせて今回の特別講座となる摔角(シュアイジャオ)基礎の講習会を受講されますと韓氏意拳、意拳への理解、認識が経験的に深まることは間違いないかと思われます!

皆様の参加ぜひお待ちしております!!

日本韓氏意拳学会

会長 光岡 英稔

ご用意いただける方は90〜100センチほど、直径5センチほどの棒をご持参ください。ホームセンターで売っている木の棒を切った様なもので大丈夫です。会でも多少の用意がございますが数が限られております。